赤色の涙
涙をもっと大きな粒にして、色なんか付けちゃって、もっと目立つ物にしたかった。
そうしたら静かに透明の涙を流すぼくに、気付かないで通り過ぎる人はいなかっただろう。
どうせなら効果音だなんて付けちゃって、みんなが他人の涙に気付く音か、笑ってしまうような音を付けてくれればよかった。
特に女の子の涙はもっと目立つようにしなきゃいけなかった。
でも僕らはみな透明を選んでしまった。
大好きな人の涙に自分の顔が映るようにしたのだろうか。
一人で静かに泣けるように、目立たなくしたのだろうか。
ぼくは透明の涙で泣きたい時もあれば、派手な赤色にして誰かに気付いて欲しい時がある。
そして涙を脱ぐんでくれたその人の指が愛おしい赤で染まればいい。
ティッシュで拭かれてしまうのは好きじゃない。
そして透明でもなく目にすら見えない涙を流す誰かがいたら、気付ける人間でいたい。