BOKETTO

ヨーロッパ一人旅の記録とひとりごと。

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

100人の村

村の人口が100人だと決まっていてもう減ることも増えることもないとするならば、そして99人のことをよく知っているのならば。 少なくとも5.6人は好きになれる異性がいるだろうか。それともたった1人だけ誰にも譲れないほど恋に落ちる異性がいるだろうか。は…

「人」接客業を辞めた理由

もう大分まえだ。ある人に「パーシーのどこが好きなん?」と聞いたら、限りなく語彙力を削り落とした舌足らずの状態で十分に間をとった後、「…人。うん、人。常に“人”って感じなんだよね。」と言った。その後、彼は首を傾げて何か言葉を足そうと試みたが、足…

あの日、ぼくのお父さんは見たこともない顔をした。

あの日、ぼくのお父さんは見たこともない顔をした。 こんなにずっと一緒にいたはずなのに、見たこともない顔をした。 こんなにずっとひとつ屋根の下にいたはずなのに、そうでもなかった。 それは春の雪をキラキラと 照らし溶かす太陽のように。 またその輝い…

死んだ魚の目は死んでいない

今まで、魚にとっても失礼なことを言っていた。 生きる喜びや目的を失っている人や社畜の人間の目を、「死んだ魚の目」とよく聞いたり言ったりすることがあったけれど、それは間違いでした。 昨日、居酒屋の食卓に出てきた活エビの目は、とっても愛おしくて…

家を失くした少女

家にかえると、ぼくのものはすっかり、いやほとんどなかった。 ぼくは泣いてしまった。 洗面所のコップも、ふとんも。 ぼくは悲しかった。 もう引っ越しているし別になにもおかしいことではないけれど。 ほっとするために家にかえってきたのに、僕は悲しさと…

ぼくが雪だとするならば

今日しぬのなら あんなにうざかった大雪もぜんぶ 雪粒ひとつひとつが愛おしくなるんだろう 革の手袋を脱いで こどものように手の温もりで そっと雪を溶かすんだろう 雪玉を作って誰かにぶつけたい心理よりも 初めて雪をさわったあの日のように ただ触れて味…

数十年前の数週間後、ぼくのおじいちゃんは生まれた。 今まで沢山の人と握手をしていたけれど、その感触も冷たさも鮮明に記憶している手は、じいちゃんのだけだ。 今まで沢山の人の顔を触ってきたけれど、そのひんやりとした冷たさを手が思い出せるのは、じ…

たんじょうびけーきとパインハンバーグ。

なんでもない日にケーキを買った。 閉店していたのに、「いいよ」とお店に入れてくれた。 全部自分で食べるつもりなのに、 家族の人数分を頼んでいる自分がいた。 4つ頼んだのに、 「シュークリーム入れておくね」とおじさんは言ったけれど ショーケースに…