BOKETTO

ヨーロッパ一人旅の記録とひとりごと。

どこからが“騒音”なのか

 

 先日、アコーディオンを買ったものの、予想以上の音のデカさに困惑。練習場所がない。

 

初めの頃は20分かけて川沿いの公園に出向いていたものの、歳をとった今、そんな元気はない。そこで、「いい場所発見!」と近所の駐車場(といっても無駄にだだっ広くほぼ誰も来ない)のど真ん中で、気持ちよく鳴り響かせていた。


そして、事件は起きる。


青空の下、たまにサッカー少年と笑みを交わしながら永遠に同じフレーズを練習していた時、突如、“チャリに乗った見知らぬ主婦”が目の前に現れた。

てっきり演奏を褒めてくれるのかと思いきや、


「私の家のリビングはすぐそこだわ、ここは住宅街よ、他の場所でやってくれる?」


ドイツ語など1ミリも分からないのに、こういう時に限って嫌なほど通じてしまうものだ。忙しいとこ、わざわざお買い物帰りのチャリのまま、あざす。それにしてもどこの国の主婦も話が長い。一言でいいっす。

 

すぐさまOKとSORRYを伝え、その時は「そんなに聴こえるのかぁ」と軽く受け止めていた、がしかし。

 

少し冷静に考えてみると、「ほんとにそんなうるさかったか?」と湧いてくる疑問。そしてどこからか、虚しさ。

 

“どこで弾いてもうるさい『楽器』なんてものを一体どこの誰が、誰の為に作ったんだよ”


と、たかが主婦に注意されただけでコチラの世界は壮大なもの。しばらくアコーディオンを抱きながら寝転がっていた。


実際、駐車場で練習していて、たまに通る歩行者のほとんどはニコッとしてくれる。100人いて99人がうるさいと思わなくとも、1人の主婦がいればアウトなのか?それとも99人がイイと思ってるのだから1人が我慢するべきなのか?

 

公園で弾いていても、聴きたくない人も居るだろう。どこへ行っても聴きたくない人は、聴きたくない。どんな優雅な演奏をしても、チャリの主婦には「雑音」でしかないのだ。

 

じゃあもう“楽器好きしかいない街を作ってしまおう”とも思ったのですが、人間だもの、楽器好きでも静寂に浸かりたい時はある。

 

ならば、「人様の耳を切り刻んで空から降らしてやろう」と中ニ病のような思考に至るまでストレスが達してしまい、流石にそれは出来ないのでそれは“絵”に転換することにしました(結局、集中出来なくやめました)。

 


翌日。渋々、公園まで歩く。

 

いつものように階段に座って音を鳴らし、いつものように沢山の笑顔をもらう。脳裏にいる主婦の存在力に負けるように、気付けば黄昏た曲ばかりになっていた。

 

すると、

「少し離れた所でずっと聴いてたけどとってもいいわ」

 

仲のいいご夫妻が穏やかな笑みとお菓子をくれた。

 

話を聞けばハンガリー人だというので、「昔3ヶ月だけ住んでたよ!」と話が弾んだ。外国のお菓子!という感じの味で、通常食べたら美味しくないのだろうけど、“チャリ主婦事件”があった後。この日は泣きそうになりながら頂いた。

 

 

結局の所、どこからが騒音なのか、法律もなければ、人の感じ方も時と場合によるのでもう答えがない。一人が楽器の練習をしていて誰の気にも障らなくとも、それを見た人が「あっ、ここで楽器弾いていいんや」とマネをし、それを見た人がまた…となれば当然音は大きくなり“騒音”になるだろう。

 

「耳」というものをとても厄介に感じる。目も耳も、見たいもの聞きたいものだけをピッと選択出来ればこんな面倒なことは起きない。ストリートで「似顔絵書きます!」とかイラストを売っている人は、興味ない人には何も迷惑かけないのに、ストリートミュージックとなると、そうはいかない。誰の耳にも入ってしまう。

 

音楽好きには「タダで」「生で」「間近で」聴けてしまうという最大の特典のあるストリートミュージックでも、そうでない人にはもう迷惑中の迷惑なのだ。

 

となれば、初めからここでやりますよ!といったライブ会場を設けるのが手っ取り早いが、自分が求めているのはストリートに音が転がっている“景色”。そしてそこに広がるコミュニケーション。

 

なので、ここまで書いといてアレですが深く考えるのやめて、とりあえず「“音楽好き”の人の耳には不愉快がない演奏レベル」にはしておこうと思います。

 

それにしても、「うるさい」と騒音を感じる方も「うるさく」楽器を鳴らす方も、耳の聞こえない人からしたら贅沢なもんだよなぁー。

 

8月末にはドイツを出てイタリアかどっかで弾くつもりです。

 

そん時また改めて書きます。

 

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(この間フリマで買ったうさぎが家出したので、またもやフリマで3ユーロ。名前はショーン。)

 

 

 

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後日書いた絵。