BOKETTO

ヨーロッパ一人旅の記録とひとりごと。

じしん

現場の状況はどうですか?

危ない現場でだれかがはたらく

夜分にすいません、専門家の何何さんです

寝てたであろうただのおっちゃんが急に専門家のフリをする

床はぐちゃぐちゃです

みんなの心の方がぐちゃぐちゃだ

次の揺れに備えてください

次に揺れるのはあの日消えた大事な命を思いながらも、か弱くひとりでに細く消えそうに灯るあの子の心の灯火だ

だれかはトラウマで心臓が悲鳴をあげている

だれかは引っ越して良かったとほっとしている

だれかは昔の友達のことを想っている

だれかは死んだ家族を想っている

だれかは死んだ家族の元に生きたいと願う

だれかは誰かが作った素晴らしい家の下敷きとなっている

だれかは今日までお世話になっていた電柱に殺された

だれかは不倫相手と一緒にいた

だれかはひとりぼっちだった

だれかは愛する人と愛し合っていた

鳥はそれを眺めている

蟻はみな同じ部屋で身をくっつけた

恐竜はどこが揺れているのか分からなかった

アザラシは笑った

猫はしずかにねむりについた

猫はしずかにねむりについた

そして僕はまた起きる

何事もなかったかのように

いくつかの命の灯火が消えたことも知らず

見ず

ただ

ソウゾウをするだけで僕は泣ける

顔も声も名前も知らぬ誰かが死んだと言うだけで

どれだけヒトが死んでも

あぁ自分の家族は生きててよかったな、と

安心してしまうのが人間である

それが人間でよいのかもしれない

しかし

ぼくはかなしいのである

そしてねこのようにねむる