BOKETTO

ヨーロッパ一人旅の記録とひとりごと。

青い髪の女の子

 

世界を嫌った、青い髪の女の子。

 

純粋すぎた少女は

 

この星では生きられなかった。

 

 

 

少女は髪をピンクにした。

 

 

自分の中にあるやさしい部分を

 

色だけでも世界にはめようとした。

 

 

けれどピンク色に染った髪は

 

次第に少女とも分離し、空(くう)をさ迷った。

 

身体は怒りと孤独が混ざり、濃い紫色になっていったからだ。

 

 

 

そして少女には何もなくなった。

 

肌色の身体だけが残った。

 

 

それでも疲れ切りながら、切磋琢磨で生き延び大人になった少女は生まれた時と同じ、真っ黒な髪を身に纏った。

 

刈り上げていた耳の横とうなじの感触など、忘れた。

 

 

 

すっかり黒髪を身の物にしたその“女性”は、無造作に頭の上にお団子を作っては、大人を演じたくなれば髪ゴムを解き首を降らした。

 

その度に、髪が揺れた。

 

邪悪なオーラと蠱惑的な匂いが大人しく激しく潜む様な黒い髪。

 

その小さな体に比例せず、大きくなりすぎたオーラで人を惹きつけたかと思えば、触れられる者はいなかった。

 

どうしようもなく惹かれ近寄ってしまうのに、決して誰も触れられなかったのだ。

 

 

 

やがて“黒”は彼女の物になった。

 

他に黒の似合う女はいなかった。

 

 

世界にあった闇の黒さも、

 

人々の心に宿る黒も、

 

そのどこかに落ちた強い黒も、

 

正義の黒も全部飲み込んだ。

 

 

飲み込んだ分だけ、大きくなる。

 

 

身体は小さいまま、オーラだけがナイフとフォークを手に取り、どんなお皿も独り占めするのだった。

 

少女の食欲は減らないだろう。