BOKETTO

ヨーロッパ一人旅の記録とひとりごと。

列車

 

便利なものは人をたくさん助け

 

便利になりすぎたものは時に人を食べてしまう

 

 

列車は今日も朝晩と

 

たくさんの人間を運んでいる

 

 

普段だれにもありがとうと言われないのに

 

少し遅れたから、と罵声を浴びる

 

 

 

人を食べる気などなかったのに

 

自分で止まることのできない列車は

 

つまるところ動かされている列車は

 

また人を食べてしまい

 

 

列車を人肉でぐちゃぐちゃにしては

 

また人を待たせ

 

 

すっかり誰かに掃除をしてもらえば

 

さっきまで人の血が体についていたことも忘れ去られ

 

また人をはこぶ

 

 

沢山の人に素晴らしい景色を見せては

 

沢山の人の出勤時間を守っては

 

今日も疲れた人間達を

 

誰も指で撫でてなどくれない人間達を

 

目的地まで優しく送り運ぶ

 

 

もっと乱暴にはこんでくれればよいのに

 

疲れたら休んでくれたらいいのに

 

 

 

また今日もぼくは

 

誰かが沢山死んできた線路を

 

誰かを沢山轢いてきた列車で走り抜く。

 

 

 

列車がとまればみなが怒るけれど

 

いつも列車は一言も文句を言わずに

 

僕たちを差別なく助けてくれる

 

数百円の小銭さえあれば。

 

 

 

そんな、人間が普段、何も思わず使っているあらゆる場所や物、そして人に、人間は常に助けられているのだ。

 

使えなくなった時は、怒るのではなく感謝をしたい。

 

列車も、頑張りすぎて倒れてしまった人間にも。

 

 

 

ありがとう。