BOKETTO

ヨーロッパ一人旅の記録とひとりごと。

ケーキと猫

 

夜行性の自分にぴったりな喫茶店を見つけてしまった。

 

店員さんは女性一人。

 

猫が二匹いる。

 

流れているのは静かなクラシック曲。

 

コーヒーはブレンドのみ。ティーは色んな国のものが揃ってる。

 

 

 

猫は何も言わず、挨拶もせず、

 

それが自然であるように膝の上に乗っかってくる。

 

 

可愛がっていると、

 

ふと膝下を離れ自分の世界に入り込み、

 

その時間はもう寄ってこない。

 

 

こちらから手を伸ばそうとも、やめろと言わんばかりに拒否をする。

 

 

かと思えばまた、

 

何事もなかったかのよう甘えてくる。

 

 

 

そしてまたサラッと姿を消したり、

 

テーブルの上で寝ていたりする。

 

 

 

これはもはや猫の話ではない。

 

 

自分だ。

 

 

 

 

 

 

人間が同じことをしたらどうだろう。

 

 

 

嫌われることなど考えず、自由に行動を選択する。

 

人に甘えたいときは甘え、一人になりたい時は一人に没頭する。

 

一人の時間を阻害するものは愛想もつかさず振り払う。

 

しまいにはテーブルの上に乗っかって寝る。

 

 

 

 

こんな人間(自分)がいたら、

 

おそらく猫のように愛されないだろう。

 

 

 

それでも自分は猫のように生きる。

 

 

というか、「ように」という比喩が似合わないほどに

自分は人間よりも遥かに猫に近い生物だと思う。

 

 

 

そして猫は、

 

「それでも愛される」ことを知っている。

 

 

 

テーブルに乗っかることだって、

 

猫の世界には「行儀が悪い」なんて言葉は存在しないのだ。

 

 

 

ただ見た目上、自分は人間の身体を持って生まれているので

 

猫のように多数の人間に愛されるのは難しい。

 

 

それでも愛してくれる人がいる。

 

 

 

 

コミュニケーション手段を含め、

 

猫と居るのは世界観が同じで気が楽だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫が座るテーブルの横には、

 

食べ荒らしたケーキの下に敷かれていたアルミホイルと小さいフォーク。

 

 

 

 

全てオーナーさんの手作りの、

 

ケーキ屋さんを開けるほどの優れたケーキ達。

 

 

の中から選んだパンプキンケーキ。

 

 

 

 

最高に美味しかった。

 

 

 

それが「人生」や「出会い」「恋愛」に感じた。

 

 

 

 

ガラス越しに並ぶケーキはどうみても美味しい。

 

そして実際に食べても、美味しい。

 

 

 

 

 

「美味しい」ということを知っておいて

 

どうしてわざわざ食べるのか?

 

 

 

 

ケーキをオーダーしてしまえば、

 

それを口に運んでしまえば、

 

その“美味しさ(快楽)”は永遠ではない。

 

 

 

「美味しさ」と同時にそれに“終わり”があることも知っている。

 

 

 それを知っていて「一時の美味しさ(快楽)」を楽しむ人間。

 

それをお金を払って手に入れる人間。

 

 

 

 

 

 

 

至って切ない。

 

 

 

 

 

 

でも理由は一つ。

 

 

 

 

 

それを“感じる”という行為こそ、

 

しっかり“感じる”という行為こそ、

 

 人間がこの星に生まれてすることなんだろう。

 

 

 

 

 

 

でも人間は可愛いことに、

 

 

 

 

ケーキは素直に楽しめて、

 

恋愛は「別れが来るのが怖い」なんていう。

 

 

 

 

 

初めから終わりがあることは知っているのに、

 

ケーキとの別れは惜しまず、「手にする(買う)」ことが出来る。

 

 

 

 

「終わり」それが恋人との関係上の別れなのか、

 

死なのか、それは分からない。

 

 

 

 

 

それでも、

 

其れらを怖がって

 

 

「手にしない(ケーキでいえば買わない」

 

という選択をすることは、

 

 

 

 

それこそ最も切なく最も不幸なことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな変態的なことを

 

ケーキひとつから考えている自分は、

 

明らかに猫ではなく人間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご馳走様。

 

 

 

 

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