BOKETTO

ヨーロッパ一人旅の記録とひとりごと。

海と銭湯

 

海へ行った。

 

普段住んでいる町から

少し車を走らせただけで、

全然違う世界が広がっていた。

 

昔の姿のまま育った木の平屋に、

ゆるく干された洗濯物。

 

2mほどの小さな橋の向こうに、

使い古された自転車。

 

目の前を横切るママチャリのおじちゃん。

 

防波堤で釣竿を振る、

サンダルのおじちゃん。

 

あの日見た、ギリシャの名前も忘れた港町に似ていた。

 

 

そこから少し車を走らせば、

港は消えていくつかの砂浜が現れる。

 

成長しきったものをそのまま地面に差し込んだような

リゾート感を醸し出している木々は、トルコのビーチの様だった。

 

また広い海を真っ直ぐと進む小さな船は

あの日黄昏ながら眺めた、クロアチアの船。

 

 

初めてここを訪れた自分には

初めて目に写る景色のはずなのに、

なつかしいと感じた。

 

 

地元の人には地元の海でしかないその海が、

自分にはギリシャクロアチア、トルコといった

全く違う町の違う海に見えているのだから面白い。

 

 

もしも自分が違う国の違う海を見ていれば、

そこにそっくりだ、なんて言うんだろう。

 

 

なぜなら海や川は繋がっているのだから。

 

 

とは言わない。

 

小さい頃に遊んだ海とは全く別物なのだから。

 

 

 

帰りは銭湯の露天風呂でおばちゃん達と話をした。

 

「美人さんね。目がキレイ。」

と言われた。

 

それから、

昔は離婚をした女性のことを“出戻り”

と呼んでいたことも教えてくれた。

 

「はじめまして」も「バイバイ」も「敬語」もない、

銭湯の会話の始まり方が好きだ。

 

「ぬるいね〜」

「あ〜気持ちいいねぇ」

「はぁーサッパリしたっ」

 

そんなことで目を合わせてニコッとする。

 

 

「福岡はいいでしょ〜」

「若いんだから色んなことしなさい」

「ダメな男に気をつけなさいよ」

 

自分が孫のように、

近所の子供のように、

穏やかな口調で言ってくる。

 

 

そしておばちゃんは、

 

「結婚生活55年でストレスはないの?」という質問に対し、

「妥協よ」と言った。

 

 

“なんでも100%なんてないでしょう。自分もそう。
 テストでもなんでも80点取れば嬉しいでしょ。”

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

また学びに、銭湯に行こう。

 

 

f:id:jigsawww23:20171205025257j:image