「もうひとりの自分」
もう少しで旅が終わる。
そしてもう少しで二十歳になる。
色んなことがありすぎて、
毎日が映画の主人公で、
それを文字に起こす作業が追いつかない。
夢のような出逢いに、
夢のような景色。
「もういいよ」と言いたくなるほど
その二つが自分の体を激しく襲う。
お陰様でここ最近、
感情を司る脳の一部が非常に忙しい。
二日前、同じホテルに滞在していたハンガリーは自分とよく似ていた。
ずっと雨が続いているので一日中ホテルにいようとしていた自分に話しかけてくれ、直ぐにフィーリングが合い、彼がロヴィニから車で一時間程の街まで連れて行ってくれた。
自分がハンガリーに少し住んでいたこともありどこか親近感がある。のに加え、久しぶりに聞くハンガリー語もまた不思議な感覚だった。
そんな彼に今日はパフェを奢ってもらい、ロヴィニの街でバイバイをしたのだが、
彼は本当に「自由人」だった。
同じくらいどデカい自由の旗を掲げる自分は、会ったばかりなのに何も気を遣っていなかった。お互い臭いくらい自然体でいた。
彼が自由でポジティブでバカみたいに子供で純粋なのは、彼のカメラロールを見せてもらった時から知っていた。
が、予想以上だった。
街に一歩出た瞬間、立ち止まるポイントやカメラを手にするタイミング、写真を撮る時の異常な姿勢、子供を見て微笑む仕草、全て自分にそっくりなのだ。
そして海を目の前にした時、
「神はいると思う?」
と彼が聞いてきたので、
“あぁ、そういうことか”と納得した。
余りにも自分にそっくりで、この日誰かと一緒に過ごしたともあまり思えていない。自分が自分と対話しているようだった。
車での帰り道には、ふと空を見上げれば見たことのない星の数。あまりの美しさに車を止め敷物を敷き、二人で寝転がった。
「なんでそんな優しいの?」
という問に、
「同じホテルの同じ部屋にいた、そしてパーシーが遅い時間に目を覚ましていた、元気には見えなかった、だから話しかけた、そしたらなんと俺の国に住んでいたことがある、そしてフィーリングが合った。」
「だから、一緒に街へ出た。これのどこがおかしい?至って自然なことだよ。」
と彼は答え、
「これが俺の生き方だよ。」
と続けた。
また、
「いつからそんな自由人なの?」
という問に対しては、
「4〜6年前かな」
とだけいい、
そのとき彼に何があったのかは分からない。
他にも色んな話をした。
↓以下自分が話したこと
(箇条書きで適当に書く)
・日本人は働き過ぎて、大人は笑顔を忘れてる。みんなじゃないけど。
・コミュニケーションが外国人の方がとりやすい。
・自分達みたいな自由人は、日本にいると“変人”に見られる。
↓彼
・パーシーは多くの人間とは違う。俺が最初話しかけた時も笑顔がステキで、コミュニケーションのとり方も面白いし、だからみんな好きになるのさ。
・俺はウェイトレスが好きじゃない。みんな笑わないし、作り笑いばかりだからね。
・「音楽」はその人を表す。
・俺がどんなに酒で酔っぱらおうと、パーシーには関係ない。なぜならこれはパーシーの人生じゃない、俺の人生だからね。
あとは、会話をそのまま書く。
自分「一人旅は時に嬉しくも悲しくもさせる。色んな人と会っては別れ、寂しくなって、また今別れないといけないあーあ。」
彼「それが人生だよ。でも俺達はハッピーさ。だって同じホテルで出逢って一緒に〜して、〜して、〜して…。そう思わない?」
自分「(泣きそう)」
彼「泣く必要はないよ。バスに乗ったらすぐに平気さ。違う街につけば、またそこで良い景色、良いホテル、良い人間に出会うさ。俺みたいなね。」
そして帰り際。
彼「もっと話したいのに、喋ることはあんまり好きじゃない感じ?日本でもこんな感じ?」
自分「うーん、もし自分が喋ることが好きなら、カメラや絵や音楽はやらなくてもいいんだよね。言葉で充分。でも違う。言葉よりもフィーリングが好き。」
彼「実に面白い。フィーリングはとても大事だね。そしてパーシーは絵を路上で売らないと!必ず多くの人が求めるよ。」
て感じで、
もう。
どれもこれも、
かなり深く理解し合っていた。
(更に驚きなことに昨日は別々の一日を過ごしたはずなのに、同じアイリッシュパブに行っていた←)
そしてバイバイをする前、また海を二人で眺める時間があったので同じ質問をした時のこと。
自分
「神はいると思う?」
彼
「もちろん。でも空の上じゃない。ここと、パーシーのそこにもね。そしてこれはみんな、同じさ。」
と、彼は自分の胸に拳をあてて笑った。
me me she RADWIMPS MV - YouTube
そして、
彼はいつも歌っていた。