端から端まで飛んだ 人間に創られたものではない真緑が生き生きと在り、急ぎ行く人が居なくなり、そこに止まった列車もホームも静かに固まっているだけだった。 自動車学校は二時間の予定だったが、一時間のみ頑張った後に残った僕の身体は見事な抜け殻とな…
世界を嫌った、青い髪の女の子。 純粋すぎた少女は この星では生きられなかった。 少女は髪をピンクにした。 自分の中にあるやさしい部分を 色だけでも世界にはめようとした。 けれどピンク色に染った髪は 次第に少女とも分離し、空(くう)をさ迷った。 身体…
だったら、最高だ。 みんなが大事な事に気付き、 急に焦り出す人間はほんとに バカすぎてどうしようもないけど それでもみんなが寿命5日なら 急いででも手を繋ぎあって 目を合わせて 想いを伝えるだろう。 それが 死ね でも おまえのことまじ嫌いだった でも…
この世の夫婦やカップルで、好きなのにすれ違ったり小さな事で蟠りの生じている男女は皆、一週間ほど仕事を休んで遠い外国に行けばいい。 そしたらどんなに今起こっている問題がバカバカしくてアリンコみたいか分かるだろう。そもそも問題ではなかったことに…
散らばった四人の家族の、想いが夫々どこを浮かんでいるか分からないまま、月日は過ぎる。僕の想いは独りでに宙ぶらりんのまま、五線譜からはみ出したピアノの音符の様にひとりぼっちだ。 今すっぴんで外を歩いても僕の目に力が漲切っているのは、この地球に…
皆がいま、自分のことで精一杯である。 精一杯同士で上手く愛し合えるのは、女友達同士だけである。 精一杯な男は精一杯な女には気付けない。 精一杯な女は精一杯な男に気付かれない。 精一杯な人間は いっぱいいっぱいの人間は 自分を犠牲にし 誰かを愛する…
「ピアノなんか辞める」 「誰がおれにピアノなんて習わせたんだ」 「おれがこんなにピアノを好きにならなければ良かったんだ」 そう数分前に感情を爆発させ泣きながらジャズの楽譜をぶっちぎったぼくは、もう既にピアノを聴いている。 でも今は弾きたくない…
涙をもっと大きな粒にして、色なんか付けちゃって、もっと目立つ物にしたかった。 そうしたら静かに透明の涙を流すぼくに、気付かないで通り過ぎる人はいなかっただろう。 どうせなら効果音だなんて付けちゃって、みんなが他人の涙に気付く音か、笑ってしま…
便利なものは人をたくさん助け 便利になりすぎたものは時に人を食べてしまう 列車は今日も朝晩と たくさんの人間を運んでいる 普段だれにもありがとうと言われないのに 少し遅れたから、と罵声を浴びる 人を食べる気などなかったのに 自分で止まることのでき…
今日のおれの身体はとても公共機関を使う気にはなれない繊細な身体をしていた。人混みは御免だ。朝も夜もタクシーを使った。 おれのタクシーの使い方は他の人とは違う。おれがタクシーを使う目的は、急いでいる時は別として、一瞬でもおれの命を預かると同時…
The most my favorite pic now.
今。 数秒後に地下の岩盤が破壊されたら。 今日眠りについたあと、そうなったら。 この文章が最後の言葉になる。 さっきあの人に見せたあの笑顔が最後の笑顔になる。 さっきあの人に見せた怒りが最後の怒りになる。 その人にとっておれの最後の表情は怒りに…
数日前。地下鉄の階段の一歩手前。手押し車に手をかけたおばあちゃんがいた。 エレベーターもない冷めた地下鉄で、果たしてその手押し車をどう階段下に持っていく気をしているのか、全く行動予想の立たないおばあちゃんがいた。 ぼくの後から駆け足の女性が…
ハンガリーに居た頃、盲目のピアニストと繋がった。なんでかはよく分からない。偶然の出会いなどぼくには無闇に降りかかる。たまたま泊まったホテルのお手伝い君が優芽のピアノ動画を気に入って、「どうしても生で聴きたい!」と言った。すると翌日、彼は道…
何でも創造の出来る神になりたいとおもうときがある ししゃも生者も みなごちゃまぜにしたいときがある 犯罪をおかした悪人も 誰かを愛し抜いた愛の人も みな ごちゃまぜにしたいときがある 大統領も犯罪者も子供も精神異常者も みな裸にして 手を繋げ合わせ…
いつも通り、深夜のリビングには疲れ切った父さんが眠っている。 そこに「上で寝なさいよ」と注意をする母さんはもういない。 ありあまった食糧も、おれの朝ごはんのアイスもなく、冷凍庫はしんとしている。 すぐに片付けたがる母さんがいないから、コンビニ…
去年、オカマバーに行った。ショーの始まりから終わりまで、感動しっぱなしだった。涙が出た。横にいた友人に、「マジで感動する。カッコイイね。」と言い、「きっとこうなるまでに色々苦難あっただろうに、今ここで輝いてると思うと…」と付け加えると、 「…
ねむりを妨げるものより この世で一番はらがたってかなしいのは ぼくからぴあのがいなくなることだ それもおれがまだ かきくけこ の き すら上手く発音できない頃から この手にずっと馴染んだモノクロと その中で音を創り出す羊と鋼 調律だってしばらくして…
人間関係全てに正解があればいい。 人間関係のはじまりは自由やファンタスティックなもので構わない。 よくわからなくたって構わない。 けれど人間関係のオワリはそっと誰かに道筋を照らしてほしい。 人間関係のオワリとは連絡が途絶えたりLINEがブロックさ…
自分が生まれた日。 裸だった。 みんなが裸のぼくを抱きしめた。 今日はどうだろう。 服を着ている。 もうパパもママもおばあちゃんも おじいちゃんも友達も 布を剥がしたぼくの裸体には触れてくれやしない。 いっそ今日まで 誰も服を着させてくれなきゃよか…
大好きな人がまたひとり死んだ。 ドラムを叩いている彼はいつも体の底からリズムを生んでいた。 その鼓動がそのまま、今もみなの記憶の中で彼らしく動いている。 彼の育ちも好きなものもぼくは特に知らない。 会った回数もそれほど多くない。 それでもぼくは…
村の人口が100人だと決まっていてもう減ることも増えることもないとするならば、そして99人のことをよく知っているのならば。 少なくとも5.6人は好きになれる異性がいるだろうか。それともたった1人だけ誰にも譲れないほど恋に落ちる異性がいるだろうか。は…
もう大分まえだ。ある人に「パーシーのどこが好きなん?」と聞いたら、限りなく語彙力を削り落とした舌足らずの状態で十分に間をとった後、「…人。うん、人。常に“人”って感じなんだよね。」と言った。その後、彼は首を傾げて何か言葉を足そうと試みたが、足…
あの日、ぼくのお父さんは見たこともない顔をした。 こんなにずっと一緒にいたはずなのに、見たこともない顔をした。 こんなにずっとひとつ屋根の下にいたはずなのに、そうでもなかった。 それは春の雪をキラキラと 照らし溶かす太陽のように。 またその輝い…
今まで、魚にとっても失礼なことを言っていた。 生きる喜びや目的を失っている人や社畜の人間の目を、「死んだ魚の目」とよく聞いたり言ったりすることがあったけれど、それは間違いでした。 昨日、居酒屋の食卓に出てきた活エビの目は、とっても愛おしくて…
家にかえると、ぼくのものはすっかり、いやほとんどなかった。 ぼくは泣いてしまった。 洗面所のコップも、ふとんも。 ぼくは悲しかった。 もう引っ越しているし別になにもおかしいことではないけれど。 ほっとするために家にかえってきたのに、僕は悲しさと…
今日しぬのなら あんなにうざかった大雪もぜんぶ 雪粒ひとつひとつが愛おしくなるんだろう 革の手袋を脱いで こどものように手の温もりで そっと雪を溶かすんだろう 雪玉を作って誰かにぶつけたい心理よりも 初めて雪をさわったあの日のように ただ触れて味…
数十年前の数週間後、ぼくのおじいちゃんは生まれた。 今まで沢山の人と握手をしていたけれど、その感触も冷たさも鮮明に記憶している手は、じいちゃんのだけだ。 今まで沢山の人の顔を触ってきたけれど、そのひんやりとした冷たさを手が思い出せるのは、じ…
なんでもない日にケーキを買った。 閉店していたのに、「いいよ」とお店に入れてくれた。 全部自分で食べるつもりなのに、 家族の人数分を頼んでいる自分がいた。 4つ頼んだのに、 「シュークリーム入れておくね」とおじさんは言ったけれど ショーケースに…
「人をころすような人ではありません」 なんて容疑者の家族や容疑者の知り合いは言うけれど 人を殺しそうな人が家族や知人にいる人の方がよっぽど珍しい さっきカフェで美味しそうにコーヒーを飲んでいた女の子も 高級イタリアンを食べていた素敵な女性も そ…